清水邦子さん(mezzo-soprano)とのアルバム『Live!武満の歌』について <レコード芸術>のCD評も

2020年4月6日、やっと、リリースしました。
やったー!とレコ発して、喜びたかったのですが、この度のコロナ禍。
やったー!と声を上げられなかったのでありました。kusso-!

邦子さんの歌は、何度聞いても素晴らしく、心動かされます。
Masteringの音源のチェック中も、つい聴き惚れてしまうほどです。
もし、私の音楽を好きでいてくださるなら、きっと解っていただけると思います。

ライナーには詳しく経緯がありますが、映画監督の水谷俊之さんが、オペラ歌手の邦子さんジャズピアニストの私、この二人の組み合わせで武満の歌を演奏したら・・と想像してくださったことが始まりです。確かに今まで武満の歌は、クラシック界の歌とピアノで、あるいはポップス界の歌と演奏で、という録音は聞いたことがありますが、確かに、この組み合わせはないかも。
やってみると、水谷監督の思惑通りでした。けっさくなほど。

クラシックというカテゴリーで曲を書いていらっしゃいましたが、武満さんは、伴奏を譜面でやってほしくはないのだ、と私は感じます。ジャズピアニストでありたかった方ですから。

譜面にあるものを演奏する、その時、その音符を自分のところに完璧に引き寄せてくるのは至難の業です。他人が書いたものですから。それが、素晴らしいものならやる価値があるけど、そうでない場合は不幸です(そうでない、と言えない不幸もあります)
jazzpianoを生徒さんに教える時にも言いますが、そこにその時、弾きたい音、必要な音を弾くことを、理想として音楽を作りたいです。それができることがJazzの最大の良い所です。その時限りです。音楽の本来の姿と思います。

今回の武満の歌の録音のようにやってみたくて、譜面がどうしても必要な方には、ガイドとしてピアノ符を作っていますので、差し上げます。CDに記載しているcontactにコンタクトして下さい。
そこから、コードや即興に興味を持っていただけますように願って。
クラシックの音楽家も、ジャズを知っているといいのにと思うことがあります。
武満の曲を弾くためのレッスンも出来ます。その際は、ご相談ください。


*****うれしいレヴューです

<レコード芸術>のCD評 2020年6月号

堀内 修
・・・・そうだ、こういう世界があったのだった。そう思ったのは清水邦子の歌う武満徹の歌が、オペラの演出家としてだけではなく、独自の表現を主張していた三谷礼二につながっていると思えたからだ。そういえば歌手はかつて彼の演出する舞台に出演していた。
  思い出がほほえみ、時を消しても・・・・最初の歌が聴こえれば、冷静さと客観性から遠く離れた、濃厚な歌の世界が始まったのがわかる。たっぷりの声、というわけではないけれど、たっぷりの感情ならある。歌に負けないくらい、高田ひろ子のピアノが歌の感情を揺らす。時には抑え、時には煽り立てるのだが、どちらかと言えば煽り立てる方が多く、自由に走って行ったりもする。もちろんそれはこの演奏の大いなる長所だ。歌だって十分に自由なのだが、ピアノの自由はそれを拡大している。
  人によってはこれを感情過多でクセが強すぎると感じられるはずだが、演奏しているほうは望むところと思うだろう。これは無害な歌の世界などでは断じてない。だいたい武満徹の歌が、実に念入りに選ばれていて、孤独だろうが絶望だろうが、誰もに親しまれている歌の世界から、大いにはみ出しているものばかりが並んでいる。うわっ、感情的過ぎないか、と思えるところもあるのだけれど、感情のどこがいけないのか?と怒られそう。覚悟して聴く人にはお勧めする。


城所孝吉
・・・・メゾ・ソプラノの清水邦子とジャズ・ピアニストの高田ひろ子がライブで武満徹のソング、歌曲を歌ったアルバム。企画・構成はてれび・ドラマで活躍する映画監督、水谷俊之で彼が本来の発案者のようである。2014年に着想し、実際に録音が行われたのが2017年。発売が2020年だから、足掛け7年のプロジェクトとなる。
  当盤の特徴は、武満がジャズになっているところである。高田は出版譜を吟味・咀嚼して、独自のヴァージョンを(即興も含めて)確立。清水はそこに乗っかったが「最初は伴奏譜がないことに不安を覚えた」という。しかし高田が実際に演奏を始めると、自然に身を任せることができたそうである。
  清水の声そのものには明らかな衰えがあり、その意味で不安定な場面もなくはない。しかし歌に込める思いや、声そのものの訴える力が大きく、全体に傾聴に値する出来となっている。
  人間的包容力、ポジティヴなエネルギーを感じるが、彼女は一体どんな人柄なのだろうか。高田も、武満に新たなテイストと豊かさを付与し得ている。メランコリック且つ暖かな印象があるのは、彼女のピアノのおかげであるだろう。<死んだ男の残したものは>の別テイクが収められているのも、ジャズ的で一興。