本当の平和活動とは 「アフガニスタンで考える」 /中村哲さん

2006年に岩波書店から出版された、『アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法9条」という中村哲さん著の、岩波ブックレットNo.673

平易な言葉で、簡潔に正直に、しかもユーモアを持って述べられている。
本当に素晴らしいので、ここに紹介する。

2015年11月13日、パリで同時多発テロ。
『集団的自衛権』を 国民の意思を無視してごり押しして通してしまった安倍政権。
それの、何がどう危険か、私たちには実感できないが、中村哲さんはその場にいて肌で感じたことを伝えてくださっている。

私たちは、こういう話をよく聞かなければ。
テレビで流される言葉など、あてにしてはいけない。


*****
 (診療所開設予定地の無医地区であるアフガニスタンの山村部の村に)今こそ4日でつきますが、当時は1週間以上かけて現地まで向かいました。
 この奥深い村の1つに行った時、私はフランス人と間違えられました。不思議な事があるものでしょう?それまでは「中国人ですか?韓国人ですか?」と訊かれたことはありましたけれども、フランス人というのは初めてでした。
 あとでわかったのですが、村人は外国人を見るのが初めてだったそうです。
 
 「いやフランス人ではなくて日本人です」と言うと、これは15年前の話ですけど、態度が180度変わりまして、半分外国人でないような丁重な扱いをしてくれるのです。これには驚きました。

 その後もアフガニスタンにおいては、単に日本人であるがために命拾いをしたとか、単に日本であるがために仕事がうまくいくようになった、とかいうことはそれこそ数知れずありました。

 これは、日本という国の大きな財産だったと思います。
 
 この理由にはいろいろな側面があります。

 古いところでは、日露戦争(1904~05)での日本の勝利(負けなかったこと)を挙げる人がありました。極東の弱小国が大国ロシアに勝った、ということへの敬意です。
 
 そしてもう一つは、敗戦後の経済復興への賞賛です。ヒロシマ・ナガサキのことはみんな知っています。
 経済大国となったにもかかわらず、他国への武力による介入を行わなかったことへの敬意。
 長いあいだ、これは日本の安全保障上の大きな財産でした。


 ところがこれが変わり始めたのは、1991年の湾岸戦争、決定的になったのは2001年以降です。
 2001年10月のアフガン空爆からイラク戦争に至るまでの、一連の日本政府の決定とそれに伴う自衛隊(現地ではジャパニーズアーミーと言います)の動きが現地に伝わるようになったころから、徐々に変わっていったのでした。

 私たちを知っている人たちはもちろんわかってくれますけれども、いまや、地域によっては、単に日本人であるために攻撃を受けたり、単に日本人であるがために仕事の妨害をされる、と言ったことも起こりつつあるのです。
 このことはぜひ知っておいていただきたいと思います。 <p25~>

・・・・・

 われわれは、外務省のいうところの「危険地帯」と呼ばれるところで活動しているのですが、現地の人々から攻撃を受けたことがありません
 それもそのはずで、現地の人々といっても、水が来るという噂を聞いて難民キャンプから戻ってきた人々がほとんどです。ですから、われわれを殺してしまうと自分の首を絞めることになるわけです。
 そういう利害関係もありますが、それよりも、現地の人々の望むことを一緒に実現していく、そのことが私たちをを守るのだと思っています

 それこそが強力な武器、強力な手段なんですね。

 ときどき、われわれを攻撃するものがいますが、たいていは米軍の誤爆で、機銃掃射を受けたこともあります。
 その時はさすがに地元の住民も怒り、反撃しようと言いだしました。
 それでも、私たちは武器を持ったことがありません。これからも持つつもりもありません

 これが一番の安全保障だと私は確信しています

 逆に、私たちの用水路に並行してアメリカの資金で道路工事をしていたトルコの会社は、3回も誘拐事件に遭遇しました。いずれも物々しく武装したセキュリティに守られて工事する中での誘拐事件でした。不幸にも3回とも誘拐された人は遺体で見つかってしましました。

 ところが武器を持たない私たちが、襲われたことはありません

 われわれが、住民と一体になっておこなっている用水路建設は、彼らが本当に望むものに添っている活動です。
 
 それゆえに、丸腰であっても安全であるということの1つの証明になると思います。

 
 最近は、日本経済を活性化して羽振りのいい国にするために、米国とさらに強力な同盟関係を、ということが言われます。
 そのためには憲法9条を改正して武力行使もやむなし、と。
 しかし経済の活性化が、人殺しをしてまで豊かさを守ろうとすることならば、すくなくともわたしは豊かになりたいとは思いません



 このアフガニスタンでの活動を通して私たちは、「国際貢献」というのは単に人を助けるということではないのだ、ということを実感しました。私たち自身がそこから学ぶべきことのほうが多いのです。

 このアフガニスタンの事業を行うことによって、少なくとも私は、世界中を席巻している迷信から自由でいられるのです。

 その迷信とは・・

 一つには、お金さえあれば幸せになれる、経済さえ豊かであれば幸せになれる、という迷信。
 もう一つは、武力があれば、軍事力があれば、自分の身を守れる、という迷信。

 実体験によって、私たちは、幸いにも、この強力な迷信から自由です。

 そして、迷信から自由であることによって、人間が追い込まれ、極限状態になった時に、これだけは必要だというものはいったい何なのか、逆に、これは無くてもいいというものは何なのか、そういうことを考えることが出来ます。

 このことを考えることは、今の日本にとっても、必要なことなのではないでしょうか。





*****

テロは武力では抑え込めない。

まずは、自分たちの都合で軍事介入してしまったことを反省し、そこから出発しなければ、自らの首を絞め続けることになる。これは自明のこと。

日本とイスラムの国々との関係はうまくいっていて、世界的にも稀な事だったという。

世界中に尊敬される国、力ではなく、その平和主義で一目おかれる国に、なればいいじゃないの。
そんなかっこいいことはないのに。

「迷信」を政治家や経済界の人は信じている、というよりは、政治家や経済界がそう仕向け人々に信じさせている。
私たちは、その仕向けられた迷信にとらわれてはいけないのだ。

あー、中村さん、総理大臣になってくれないかなあ。








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